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長寿の作法
医療や福祉現場で活躍する人々が、健康寿命を延ばす工夫を紹介します。
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喫煙のリスクについて話す藤原久義・県立尼崎総合医療センター名誉院長=尼崎市東難波町2
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喫煙のリスクについて話す藤原久義・県立尼崎総合医療センター名誉院長=尼崎市東難波町2
神戸新聞NEXT
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 喫煙に伴う病気で、年間に日本でどれぐらいの人が亡くなっているか、ご存じでしょうか。約13万人です。内訳はがんが約6割の7万7千人、残る4割が循環器疾患や呼吸器疾患です。

 リスクとしては高血糖や塩分の高摂取、アルコール摂取よりもはるかに高く、世界保健機関(WHO)も「予防可能な単一で最大の病気の原因」に喫煙を挙げています。たばこをやめれば「10年は寿命が延びる」とも言われています。

 日本の喫煙率は年々下がってきていますが、厚生労働省の2017年調査では、依然として男性の29・4%、女性の7・2%、男女全体では17・7%がたばこを習慣的に吸っています。

 たばこは趣味や嗜好(しこう)の問題ではありません。「ニコチン依存症」という病気です。だから保険が適用される禁煙外来があるのです。専門医や看護師のフォローを受けながら治療すれば、自力で禁煙するよりも成功率が3、4倍は高まるとされています。

 たばこのもう一つの大きな問題が受動喫煙です。喫煙者が吸う「主流煙」はフィルターを通して肺に入るのに対し、たばこの先から立ち上る「副流煙」は直接吸い込んでしまうため、より有毒です。微小粒子状物質(PM2・5)も含まれています。受動喫煙により、国内では年間約1万5千人が死亡しているとの推計もあります。

 受動喫煙の防止に向け、兵庫県では2013年に条例が施行され、今年7月には国の法律も成立しました。ただ、両方とも喫煙室設置などの分煙を条件付きで認めており、課題は残っています。

 県条例の効果を検証するため、私たちは急性心筋梗塞と不安定狭心症の発生数を施行前後で比較する研究にも取り組みました。その結果、全体としては予防効果が見られませんでしたが、地域差が生じていることも分かりました。

 具体的には神戸市で発生が減り、尼崎市では減っていませんでした。理由を探るため両市の飲食店にアンケートをしてみたところ、神戸は尼崎よりも条例の認識率、屋内全面禁煙の割合がともに高いことが確認されました。

 県条例については現在、よりよい内容となるよう見直しが進められています。国際的な潮流は分煙を認めない「屋内全面禁煙」です。煙を吸わされる側が、積極的に店舗のオーナーらに全面禁煙を求める。それも受動喫煙をなくすには有効だと思います。(聞き手・田中陽一、協力・兵庫県予防医学協会)

【ふじわら・ひさよし】1944年、青森県十和田市生まれ。京都大医学部卒業後、同大医学部講師や岐阜大大学院教授を経て、2006年に兵庫県立尼崎病院長。15年、県立塚口病院との統合・再編で開院した尼崎総合医療センターで院長に就き、18年から現職。禁煙推進学術ネットワーク理事長や県受動喫煙防止対策検討委員会委員長も担う。

藤原さんが勧める三つの作法

一、禁煙外来を上手に利用し、たばこをやめる

一、喫煙者は周囲に受動喫煙の被害を与えない

一、喫煙可能な店舗などに受動喫煙防止を求める

禁煙外来

 診断テストによるニコチン依存度が一定以上▽35歳以上の場合、1日の喫煙本数と喫煙年数に基づく指数が基準を上回る-などの要件を満たせば保険診療が受けられる。ニコチンパッチやニコチンガムのほか、喫煙の満足感を得にくくする飲み薬「バレニクリン」もある。

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