東播

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住宅があった場所は地面ごとえぐられ、濁った泥水がたまった=2015年9月16日、茨城県常総市三坂町(同市提供)
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住宅があった場所は地面ごとえぐられ、濁った泥水がたまった=2015年9月16日、茨城県常総市三坂町(同市提供)
鬼怒川の堤防が決壊した現場そばでは住宅が再建された=昨年12月10日
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鬼怒川の堤防が決壊した現場そばでは住宅が再建された=昨年12月10日
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 かさ上げされ、見上げるほど高くなった堤防が続いている。茨城県常総市は2015年9月、関東・東北豪雨で鬼怒川が決壊し、市域の3分の1が浸水した。

 下流域の同市三坂町は河川沿いに伝統的な和風家屋が連なるが、決壊した地域だけ空き地が広がる。現代的なデザインの家がぽつりぽつり。開発中の住宅地のようだ。

 そのうちの一軒に暮らす女性(65)が玄関先で取材に応じてくれた。「戻ってきて良かったか、悪かったか…。正直、100パーセント良かったとは思わないよ」

 豪雨で女性宅は流され、2年前に元の場所に再建。夫と2人で暮らす。再建した家は、広い敷地に約130平方メートルの平屋。庭の南側の一部は野菜や花を育てる菜園だが、大半が砂利で覆われている。被災前は母屋と増築した計2棟に加え、倉庫もあった。

 あの日、南隣の茨城県守谷市内にある妹宅に避難し、わが町の被災をテレビで見詰めていた。土手が削られ茶色く濁った水が一気に流れ出す。水位は2階まで迫り、近所の人がヘリコプターで助け出された。泥水の勢いは衰えず、わが家も流された。画面に流れる光景にぼうぜんとするしかなかった。

 「もう何が何だか分からなくって、ショックなんてもんじゃないよ。今まで築いてきたものが全部なくなって、この先どうすんだろって感じでね」

 昨年10月、台風19号が再び関東地方を襲った。常総市の鬼怒川は堤防のかさ上げを含む河川改修を終え、浸水被害はなかったが、氾濫危険水位まで達し、避難指示が発令された。夫婦は午前2時に避難場所に逃げて朝まで過ごした。「水害のたびにずーっと心配しなきゃいけない」。再び、水害に遭うかもしれないという不安は拭いきれない。

     ◇

 被災後、夫婦は仮設住宅代わりに用意された、つくば市の公務員宿舎に入った。もともと取り壊し予定だったため、2年の期限があり、住まいをどうするか決断を急いだ。つくばに住む長男から同居の誘いがあったが、近所の人は戻り始め、住み慣れた場所に戻りたいという思いも強かった。

 自宅再建の金銭負担は重い。全壊判定を受け、被災者生活再建支援金300万円に加え、数十万円の義援金。災害保険には水害補償も付けていたが、数千万円に達した再建費用を補いきれず、貯蓄を切り崩した。

 「別の地域に移り、新たに土地を買う余裕なんてありません。この年だとローンを組めても返せない。できる範囲で建てたけど、もうほとんど一文無し」

 やっと生活が落ち着いてきたが大雨のたびに、心の奥に戸惑いが広がる。ここに再建してよかったのかな、長男と暮らした方がよかったのかな…。

   □   □

 鬼怒川の流域面積は1761平方キロメートル。同程度の加古川の下流に位置する兵庫県加古川、高砂市でも同じ状況は起こりうる。災害列島に暮らす私たちはどう備え、命を守ればよいのだろうか。阪神・淡路大震災から25年を迎えようとする今、住まいの安全、安心を考えたい。(若林幹夫)

【関東・東北豪雨の鬼怒川決壊】2015年9月、栃木県を源流に関東平野を流れる鬼怒川は、3日間で流域平均501ミリという過去最高の雨量を記録。同月10日午後0時50分、下流に位置する茨城県常総市三坂町の左岸堤防が決壊した。同市は市域の3分の1が浸水し、死者2人をはじめとする人的被害46人、住宅被害は全壊53件を含む8千件以上に上った。

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