三田

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「パティシエ・エス・コヤマ」の庭で、生ごみからできた堆肥をまいて手入れする松下裕崇さん=三田市ゆりのき台5
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「パティシエ・エス・コヤマ」の庭で、生ごみからできた堆肥をまいて手入れする松下裕崇さん=三田市ゆりのき台5
闘病した女性の依頼でデザインした庭。自然岩を多用し、扉は鉄材を加工して手作りした(松下さん提供)
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闘病した女性の依頼でデザインした庭。自然岩を多用し、扉は鉄材を加工して手作りした(松下さん提供)

■庭師・松下裕崇さん(41) 

 ギャグ漫画「天才バカボン」の主人公に憧れて庭師になった。ちゃめっ気あふれる話をする一方、仕事に対する思いを熱く語る。「庭は自分を表現する場所じゃない。お客さんの美意識を庭に流し込む作業なんです」

 大阪府出身。関西学院大学神戸三田キャンパスの総合政策学部3期生として入学し、休耕田で野菜を育てるサークルで活動。自然の風景を守る仕事に就きたいと思うようになった。

 卒業後、フリーターをしていた時、ある園芸家が教えてくれた。「植物の知識を身につけるには、いろんな原種が集まるイギリスがいい」。ただ、お金はない。勉強したいと英語で手紙にしたため、現地でオープンガーデンを催す富裕層に片っ端から送った。返事が来ると住み込みで庭の手入れをする傍ら、珍しい標本を見せてもらうなどし、2年間学んだ。

 うち半年は大富豪ロスチャイルド家で働き、庭造りも任された。「100種類のモミジを丸く刈り込んでほしい」といった突拍子もない発想で驚かされたが、「庭までオーラをまとってるんです。庭師はその人の世界観をつくることなのかなって納得しましたね」

 28歳で帰国し、初めて一緒に仕事したのが人気洋菓子店「パティシエ・エス・コヤマ」の小山進さん(55)だ。要望は「虫取りができる庭」。クワガタが来るコナラ、カミキリムシが好きなイチジク、鳥が寄りつく木の実やベリー…。英国で学んだ野菜や果樹で庭を造る「キッチンガーデン」を取り入れ、スイーツの店らしく季節感が出るようにした。

 こだわりのある人が依頼してくるからこそ悩む。約7年前にはがんで闘病中の女性から頼まれた。死を覚悟した人に何ができるのか。何度も打ち合わせに通うと、おいしいコーヒーを入れ、趣味の天体観測の話をしてくれた。言葉で説明しない。飾り気のない雰囲気がいい、と。

 「簡素さ」を大切にし、庭は山の石をナチュラルに並べた。2月の寒い時期に女性は車いすで作業を見守り「すごく好き」と喜んでくれた。女性は亡くなったが、今、思う。「庭造りに終わりはない。でも、自分なりにもがいて、その人に対する答えを出すのが大事なのかな」(山脇未菜美)

【取材後記】長らく庭造りをしていると、依頼主が代替わりすることも多い。手入れする中で「お父さん、こんな好みでしたよね」と後継ぎに伝えると、驚かれたり、しみじみとされたり。「庭師は家族をつなぐ役割もある」と松下さんは言う。その言葉が心強く感じた。

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