三木

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関西国際大保健医学部の中島登美子教授
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関西国際大保健医学部の中島登美子教授

■関西国際大保健医療学部 中島登美子教授

 早産で少し早く生まれた赤ちゃんを胸に抱き、肌を合わせてケアする「カンガルーケア」。最初にカンガルーケアと聞いた時は、有袋類のカンガルーを連想した。文献を探すと「ポジティブな影響がある」という報告のみ。ネガティブなものは一つもなかった。

 なぜ、ポジティブなのか? 母親の穏やかな表情はどこから来ているのか? この謎を解いてみようと思ったのが、研究を始めたきっかけだった。

 カンガルーケアの発祥は、南米コロンビアのボゴタ。当時、開発途上国は物質的に貧しく、一般的に未熟児と呼ばれる、小さく生まれた赤ちゃんを入れる保育器には、1台に複数の赤ちゃんが入っていた。

 保育器の中は気温34度、湿度60%程度と、高温多湿で感染が起こりやすい状態だった。1人が感染すると、他の赤ちゃんにも広がり、亡くなる赤ちゃんが多かった。

 そのため、生後の危機的状況を脱した赤ちゃんを保育器から出して、肌と肌を触れ合わせて母親に育ててもらうことを試みた。小さな赤ちゃんを保育器から出すことは、生命の危険に晒(さら)すため、とても勇気がいることだった。

 しかし、意外にも小さな赤ちゃんたちは育ち、それ以上に予期しないことが起きた。それまでは未熟児の赤ちゃんが退院しても、母親は小さく産んだことへの罪悪感で赤ちゃんと関係を築くのが難しかった。赤ちゃんを捨てる乳児遺棄も多かった。保育器から出して肌を触れ合わせる試みでは、赤ちゃんをとても慈しむ様子が見られ、急速に愛着形成していることが分かった。

 私は、どのようにこれが生じるのかを研究してきた。カンガルーケアについて言えるのは、出産予定日よりかなり早く産まれる「早産」で傷ついた母親の体験は、自身が抱える課題と向き合うことで癒やされるということ。そして、同ケアは母親が向き合うように支えることができるということだ。

 カンガルーケアは保育器から小さな赤ちゃんを取り出すという既成概念を覆す発想から生まれ、ケアの開発には柔軟な発想が求められると言える。

 先進国では、カンガルーケアは高度医療の下で主に母子関係を育むために行われる。中南米やアフリカなどの開発途上国では「マザー・カンガルーケア」として、赤ちゃんを育てながら母子関係を育むために行われ、赤ちゃんの生命を守るための優れたケアとして国連児童基金(ユニセフ)が推奨している。

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 関西国際大学(兵庫県三木市志染町青山1)の教員が、それぞれの研究分野をテーマにつづります。

【なかじま・とみこ】1952年、北海道生まれ。京都市在住。聖路加看護大大学院看護学研究科修了。英国・ロンドンの小児病院や神奈川県立こども病院で勤務。静岡県立大教授や自治医科大教授などを経て、2018年から現職。

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