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縫製の職人として起業した藤田友弥さん=西脇市西脇、コンセント
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縫製の職人として起業した藤田友弥さん=西脇市西脇、コンセント

■縫製士 藤田友弥さん(29)=兵庫県多可町

 「目指すのは、小さな仕立屋さんのような存在でしょうか」と、穏やかな口調で語る。今年、縫製やパターンなどを請け負う職人としてスタートを切った。北播磨は、生地ならば、多種多様な品がそろう播州織産地だが、縫製の職人はまだまだ珍しい存在。新たなうねりを生み出す一人として期待される。

 西脇市が民間事業者を通じて受け入れてきた、デザイナー育成研修生計24人の中では初の起業。市内の企業で約2年間の経験を経て、思い切って独立した。屋号は「ブレーメンワークス」。少しずつ買い集めてきたミシン5台などを駆使しながら、店頭に並ぶ播州織の最終製品や、サンプル作りなどをこなす。

 西脇高校を経て、文化服装学院(東京都)で服作りの基礎からパターン、生産管理などを学んだ。卒業後の6年ほどは、都内の縫製工場で、一流ブランドから舞台衣装、制服、作業着までと、あらゆる服の縫製などに従事し、アパレル業界全体を見渡して腕を磨いてきた。

 実家のある多可町は織物工場もあって、播州織は身近な存在だったというが、特に関心が高かったわけではない。子どもの頃はプラモデルなどに熱中し、料理人を目指した時期もあった。庭師の父親の影響もあってか、「とにかくものづくりには興味があった」と振り返る。

 高校は普通科だったが、服飾を学ぶ同校生活情報科の刺激を受け、文化祭でのファッションショーの出品にも加わった。「当時は洋服が全く分からず、シャツやパンツが形になれば、というくらいだった」と苦笑い。だが、この経験は、服飾制作への道を切り開くことになる。

 業務の多くが海外に移った縫製業は、全国的に見ると、工賃の問題もあり、高齢化と廃業で縮小傾向にあるという。自身もしばらくは、別のアルバイトと並行して生活するつもりだが、「大きな工場ではできない、さまざまなアイテムに臨機応変に対応できるようになりたい」と将来を展望する。

 今年1月に開かれた西脇市の成人式では、同じ西脇高校出身の後輩2人が「播州織で仕立てたい」と願った、一点ものの振り袖とスーツの縫製を担った。「特に和服の縫製は初めてで大変だったが、ものすごくいい経験になった」

 上京する前から、地元に戻るつもりだったが、繊維産業に従事する若者を育成する、西脇市の研修制度に参加するタイミングが帰郷につながった。東京には同業の仲間もいて、情報量も圧倒的に多い。それでも「地元でも、自分のやりたいことはできるのかな」と愛着をにじませる。

 まだ、一歩を踏み出したばかり。「しっかりとした仕事を残して、いろんな話をいただけるようになっていきたい」と語る。(長嶺麻子)

【記者の一言】国内では縮小傾向にあるという縫製業。移り変わりの激しいアパレル業界で、時代のトレンドに惑わされることなく、実直な「ものづくり」にこだわって、りんとたたずむ様子が印象的だ。若く、先立つ資金はまだ乏しいというが、「ここには生地はたくさんあるけど、仕立ててもらえないから」とこぼす人は意外に多い。その思いを受け止める確かな存在になっていくことが待ち遠しい。

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