北播

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織機の音が鳴り響く工房に立つ、玉木新雌さん=西脇市比延町
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織機の音が鳴り響く工房に立つ、玉木新雌さん=西脇市比延町

 今や播州織を代表するブランド、タマキニイメ。糸の染色から、織り、編み、縫い、仕上げまでの工程を兵庫県西脇市比延町の自社で行う。その代表を務める玉木新雌さん(41)が、デザイナーとして自らが理想とする服作りのため、織物の職人たちが暮らす町、西脇市に居を移して10年が過ぎた。

 「大変だとは考えもせず、勢いで来た西脇。力織機が手に入って自分で生産するようになり、実績や、売上という結果を残そうと、必死で作品づくりしていたら、あっという間」

 手触り、色使いにこだわり抜いて織った生地をショールとして販売すると、当時のトレンドとうまく合致し、事業は加速度的に勢いを増した。当初、同市西脇で始めた店はすぐに手狭となり、同市上野を経て、より広い現在の場所に。織機、編み機は数や種類を増し続け、社員は50人近く、パート従業員を含めると100人規模になる。

 全国の百貨店や海外での取り扱いも増え、ブランドの知名度は飛躍的に向上した。テレビなどのメディアで取り上げられる機会も多い。同じく織物の産地である、郷里の福井県勝山市でも知られた存在になった。

 とはいえ、従業員数がぐっと多くなり、経営者としての手法は試行錯誤が本音。スタッフに自分のイメージがなかなか伝わらないなど、もどかしい思いもしてきたが、最近気がついた。「私、人が未知の存在すぎた。ずっと自分とのコミュニケーションに忙しくて。そら難しいわ。経験が少ないもんって」と笑う。

 自称、人嫌いだが、基本的に性格の裏表はない。織機の並ぶ工房をガラス張りにするのも、そのスタンスから。先駆者や専門家らの助言はすぐに取り入れる。「その方が圧倒的に早い。試行錯誤された結果だから。柔らかい風合いのために古い織機を使い始めたのも、そう。常に教えてくれる人がいた。クリエーションで、全部が自分発信なんてことはありえない」

 規模が大きくなるにつれ、一貫生産が持ち味だった工房内が、分業化していく現象も起きた。「売り場と作る側がつながらないと、新しい発想が起きない」と疑問視し、「効率は落ちるけど、売り手と作り手が双方の現場を学び、互いに向上し合えば、生きた意見が出てくる。原点に戻ろう」とスタッフにけしかける。

 ブランドを立ち上げてからは15年。「お決まりの成功パターンなんてない」と言い切る。「地に足をつけて、目の前のことを真剣に、小さな成功を積み重ねることが大事」とし、「お金ばかりを追うと行き詰まる。仕事って本来、楽しいもの。自分もお客さんも取引先も地域も、皆に利があるやり方はある」と、さらに明るい未来を見据える。(長嶺麻子)

【記者の一言】繰り出される言葉に取材メモが追い付かない。浮かんだアイデアは野生動物のような俊敏さですぐ試し、思う結果が出なければ、次の手を打つ。アパレルだけでなく、経営や農業と、関心のあることは現場に足を運び、納得するまでとことん学ぶ。読書量も多い。固定概念にとらわれないが、物事の基礎をしっかり押さえる。その速さと足腰の強さこそが、成功の秘けつなんだと納得させられる。

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