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「今でも姫路城を見上げるたびに心が震える」と話す永田萠さん=姫路市本町(撮影・小林良多)
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「今でも姫路城を見上げるたびに心が震える」と話す永田萠さん=姫路市本町(撮影・小林良多)

 姫路城(兵庫県姫路市)の東にある賢明女子学院で中学・高校の6年間、青春時代を過ごした永田萠さん。城のそばで美術の世界に飛び込むきっかけになった恩師と出会い、人が創り出す美の奥深さを感じた。2年前、姫路市立美術館長に就き、再び大天守のたもとに帰って来た。永田さんの心の中に城はどんなふうにたたずんできたのだろう。

 中高生時代、当時の日本を代表する画家だった飯田勇先生に学んだ。晴れや曇りの日には草むしりを、雨が降った日は美術の授業をしてくれる面白い先生でした。ある日、バラ園で草むしりをしていた時、みんなが嫌になってさぼり始めると、先生がバラを指して「これは何?」と。私たちが「バラです」と答えると、「違う、これは自然の美だ」と先生。そして、お城を指さして続けたんです。「では、あれは?」。「姫路城」「白鷺城」などと言うみんなに先生が言った言葉が忘れられません。「違う、あれは人間が作った最高の『美』です」。今も強烈に心に残ってます。

 成安女子短大(当時)に進み、卒業後、出版社などでグラフィックデザインの仕事を経て1975年、イラストレーターとして独立した。苦しい駆け出し時代もお城は近くにあった。

 27、28歳の頃、東京の出版社でだめ出しされ、描き直しをしなきゃいけなくなった。大きな仕事を任されるようになった一方で、先が見えない苦しい時期でした。けちょんけちょんに言われてすっかり落ち込んだ帰り道、東京駅で「姫路城」が目に入ったんです。大きな姫路城の写真が載った何かのキャンペーンのポスターでした。いくつもの柱に何枚も貼られ、私が行く先にずっとお城が並んでいて。ああ、私の姫路城だ。気持ちがこみ上げました。

 実は、そのポスターのお城の色の印象は黒。昭和から平成の大修理までの間に漆喰が黒ずんだんですね。今の白いガウンをふわっと広げたような優しいお城とは違って、黒々としてものすごい存在感でした。でも、お城がこう言ってくれたように感じたんです。「負けるな」と。一瞬のうちに姫路で過ごした日々や仕事を捨てて大きな夢を追い掛けようと思った頃を思い出しました。

 永田さんはこれまでに2回、姫路城を作品にした。一つは、シラサギの羽を持ち、城をあしらった振り袖をまとった妖精を表現した「時をつないで」(1993年)。もう一つの作品「姫路慕情」(2015年)は、姫路にまつわる伝説の美女をテーマに城とサクラの花の上に座る妖精を描いた。

 2回描いて「負けた」と思いました。姫路城は難しい題材です。どっしり感があって、デッサンを間違うとこんな崩れそうな石垣にこんな建物は乗っからないって…。もう、眺めるだけでいい。見てかなわないなあと思うだけで十分だと。もし今後、依頼が来てもお断りし、「写真にしてください」と言いますね。

 2018年4月、美術館長に就任した。人生の節目にあり続けてきた城がすぐそばに堂々とそびえる。

 お薦めの風景は正面玄関から見る美術館と姫路城。美術館を守るように後ろにお城が立っていて。中高生時代によく見た角度と同じなんです。世界一のシチュエーションだなと。館長になってから決めていることがあるんです。館長室に姫路城の写真は飾らない。だって、本物がすぐそばにあるんですから。どんなに素晴らしい写真も本物の美しさにはかないません。(春元 唯)

【ながた・もえ】1949年、加西市生まれ。絵本作家・いわさきちひろさんの大ファンで、同じ世界へ。子どもたちからもらうエネルギーを源に、これまでに約170冊に上る画集やエッセーなどを出版。近年は中学校でキャリア教育の講演にも力を注ぐ。

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