社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大による経済の落ち込みに対応し、日銀が追加金融緩和策を決めた。

 国債買い入れ枠の上限を撤廃し、企業が発行する社債の購入枠も拡大する。金融機関への支援も強化する。資金需要の急増による金利上昇を抑え込むとともに、民間企業の資金繰りを支える狙いがある。

 コロナ禍による中小企業の破綻は100社に達した。政府の支援策は手続きなどに時間を要し、資金繰りに窮した企業は金融機関が支えるしかない。それだけ見れば、中央銀行として必要な危機対応といえる。

 国民1人当たり10万円の支給などを盛り込んだ政府の2020年度補正予算案は、総額25・7兆円の9割を赤字国債の発行で賄う。今回の緩和策により、政府は今後も日銀の国債買い入れをあてにして追加施策を講じることが可能になる。

 ただ政府の資金繰りを中央銀行が支える形は本来、禁じ手であることを忘れてはならない。

 金融緩和の長期化で日銀はすでに国債発行残高の半数近くを抱え込む。さらに増えれば金利上昇時に含み損が膨れ上がるリスクもある。日銀の経営の健全性が損なわれ、円の価値にも響きかねない。

 今回はあくまで緊急策であり、恒常化すべきではない。そのことを認識した上で、日銀は資金繰り支援に全力を注がねばならない。

 追加金融緩和により、世の中に出回るお金の量は大幅に増える。そうなれば物価が上がり、連動して景気も良くなる。それがこれまでの日銀の政策理念だった。安倍政権の経済政策とも合致していた。

 日銀はコロナ禍により20年度の日本経済が大幅なマイナス成長に陥り、物価が下落すると予測する。しかし経済活動が収縮する中でお金の量が増えれば、投機資金として商品市場に流れ込み、賃金が上がらないのに物価を押し上げる可能性も否めない。そうなれば、国民は感染拡大と二重の痛みを強いられる。

 追加緩和が資金繰り支援に十分な効果を上げているか。実体経済に予期せぬ副作用をもたらしていないか。こうした点に注視して、日銀は適切な金融政策を打つ必要がある。

 黒田総裁は13年の就任以来、2%の物価上昇目標を掲げてきた。しかしいまだ達成はかなわず、任期を迎える23年4月までの実現は難しくなっている。

 1920年代の世界恐慌に匹敵する景気低迷も予測される中で、2%目標達成の可否にどれだけの意味があるだろう。それよりも金融面から経済の底割れを回避することを、任期終盤の最大の使命ととらえてもらいたい。

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