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 安倍晋三首相は新型コロナウイルス禍に対応する緊急経済対策の策定を関係閣僚に指示した。2020年度第1次補正予算案を10日以内に編成し、早期成立を目指す。

 死者数が急増し市街地封鎖に至った米国では、2兆2千億ドル(約237兆円)規模の経済対策法が成立した。所得制限を設けた上で国民に最大1200ドル(約13万円)を給付する。ドイツなども相次いで巨額の対策を講じている。感染拡大の終息が見通せず人やモノの流れに急ブレーキがかかる中、国民生活を支えるのは財政の重要な役割だ。

 留意すべきは、最も必要とされる施策にスピーディーに財源を配分することにある。規模ありきではなく、拡大の状況を見極めながら適切な策を講じなければならない。

 首相は総事業費を、リーマン・ショック時の56兆円を上回る「かつてない規模」とした。国内総生産(GDP)の約1割で、対GDP比では米国に匹敵する規模になる。

 柱の一つは国民への現金給付だ。政府内では、感染拡大の影響で収入が減った世帯を対象に既存の生活困窮者向け貸付制度を活用し、返済不要とすることで事実上の給付とする手法が有力視されている。

 与野党からは一律給付や、所得制限を設ける案も出ている。制限などを設ければ制度設計に時間を費やす。一律給付なら迅速にお金が国民に届くが、富裕層も対象になり公平性を欠く。財源を有効に活用できる枠組みを練り上げてもらいたい。

 政府は、感染拡大で業績が悪化した企業が従業員を雇い続ける場合の助成金の給付率も引き上げる方針だ。雇用の維持は社会不安の抑制にも直結する。ウイルス禍に乗じた解雇や雇い止めなどの横行にも目を光らせる必要がある。

 一方、自民党内から国産食材に限定した商品券の配布を求める声が出ている点には耳を疑う。

 関連業者は歓迎するだろうが、多くの国民は今、それを求めているのか。先行きが見えず不安を抱く労働者や自営業者、企業経営者の視点に立ち、安心材料を提供する政治の責務を改めて認識するべきだ。

 政府は3月の月例経済報告で、6年9カ月ぶりに景気判断から「回復」の表現を削除した。世界の主要金融機関が加盟する国際金融協会は、20年に日米欧がそろってマイナス成長に陥るとの予測を発表している。日本経済の落ち込みは、かつてのリーマン・ショック時を上回るとの見方も強まっている。

 企業の経営基盤にとどまらず、社会の安定まで揺るがされかねない局面であることを、政府、国会は直視しなければならない。

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