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 新型コロナウイルスの感染拡大が世界で深刻化する状況を受け、東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決まった。国際オリンピック委員会(IOC)は来年夏までに開催すると理事会で承認した。

 延期は五輪史上初めてである。平和の祭典が感染症に阻まれたことは、残念というしかない。入念に準備してきた選手や関係者の落胆と動揺は察するに余りある。

 だが各国の感染者数は急増している。世界保健機関(WHO)はパンデミック(世界的大流行)が加速しているとみており、終息の気配はみられない。選手や観客の安全第一で考えればやむを得ない判断だ。

 IOCや日本政府、大会組織委員会などは感染拡大の中でも予定通りの開催を目指してきた。各国の競技団体や選手らの反発もあって方針転換したが、もっと早く決断すべきだった。選手らに配慮し、早急に新たな会期を確定させねばならない。

 「1年程度の延期」は、安倍晋三首相からIOCのバッハ会長に提案したという。来年9月までの自民党総裁任期中の開催を意識したとの見方がある。だが選手ファーストを貫くなら、政治的な思惑を持ち込むことは禁物だ。猛暑が続く盛夏の開催にこだわらず、春や秋も含めて柔軟に日程を考えてもらいたい。

 延期に伴う課題は山積している。まず選手選考をどうするかだ。選考を終えた競技団体は、代表選手をそのままとするか、選考をやり直すかという難しい検討をしなければならない。練習環境の確保や精神面でのケアも必要だ。不公平感が生まれず、安心して競技できるよう、選手を最優先した準備が望まれる。

 運営面では、競技会場の確保が急務となる。大会組織委員会はすでに決まっていた会場を来年も使えるか確認するが、別の予定が入っていれば難しい調整となる。選手村は大会後に改修されてマンションになるため、購入した人たちの入居時期にも影響が出てくる。

 組織委の職員や10万人を超えるボランティアを集め直す作業も簡単ではない。販売された観戦チケットの扱いも決めなければならない。

 いずれも、関係する人たちに十分配慮した措置を模索してほしい。

 さらに頭が痛いのが追加の費用負担の問題だ。会場費や人件費など数千億円規模ともいわれる。組織委やIOC、東京都、国などが話し合い、国民負担を極力少なくする負担のあり方を協議するべきだ。

 1年後の五輪開催の大前提となるのは、感染拡大の終息だ。国際社会が連携して予防策や治療法の開発を進めなければならない。知恵と工夫を集めて、開催につなげたい。

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