社説

  • 印刷

 防衛省は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を巡り、3月中にも沖縄県に工事の設計変更を申請する。沿岸部の埋め立て予定地にある軟弱地盤の改良工事を実施するためだ。

 海底や陸上の一部に、砂を締め固めたくい7万7千本を打ち込む予定だが、移設に反対する玉城デニー知事は申請を承認しない構えで、国との対立激化は避けられない。

 住民投票で示された民意を顧みない工事はさらに長期化し、環境への悪影響も費用も膨れあがることになる。政府は事業の必要性を再検討するべきだ。

 埋め立て予定の海域は、海に突き出た辺野古崎の東と南にある計約160ヘクタールで、2018年12月以降、このうち約40ヘクタールで土砂の投入が進む。地盤改良が必要な海域は東側の半分以上を占める。

 地盤改良に必要な水深は最大約70メートルに達するとされる。くい打ちなどの強化で埋め立てできると防衛省は主張するが、「マヨネーズ状」とも形容される地盤の改良が本当に可能なのか疑問を抱く。

 看過できないのは、70メートルより深い海底の地盤も軟弱である可能性を示すデータの存在だ。

 専門家チームの分析では、護岸を造成すれば最悪の場合は崩壊する恐れがあるとの結果が出た。国土交通省が定めた港湾施設の基準を満たさないという。防衛省はこのデータを「信頼に値しない」と切り捨てているが、着工ありきの危険きわまりない判断というしかない。

 仮に設計変更が認められたとしても、工期は当初予定の5年から約9年3カ月に延びる。米軍への提供手続きなどを加えると、事業完了までに約12年の長期間を要する。普天間飛行場の返還は30年代以降へと大幅にずれ込む。県が申請を承認せず、国が違法確認訴訟などで対抗すれば、さらに先に延びる恐れもある。

 総工費も政府は当初計画額の2・7倍に当たる約9300億円を、県は2兆円以上を見込む。いずれにせよ巨額の公費が注ぎ込まれるだけに、国民全体がその効果を厳しく見極める必要がある。

 辺野古の海には絶滅危惧種を含む5千種以上の生物が生息するなど世界的にも貴重な生物多様性が残されており、県は「地盤改良に伴う環境影響が懸念される」と述べる。

 日米政府が普天間返還に合意してから来年4月で25年となる。さらに10年もの工期を費やすことは、政府の唱える「危険性の一日も早い除去」と明らかに矛盾する。

 政府は無理な地盤改良をしてまでの埋め立て工事は中断し、返還実現の方策を練り直す必要がある。

社説の最新
もっと見る

天気(5月30日)

  • 27℃
  • 19℃
  • 10%

  • 27℃
  • 13℃
  • 10%

  • 29℃
  • 17℃
  • 10%

  • 30℃
  • 16℃
  • 10%

お知らせ