社説

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 学校法人「森友学園」の国有地売却を巡る文書改ざん問題が新たな局面を迎えた。

 財務省近畿財務局職員が2年前に神戸の自宅で自殺したのは、公文書改ざんを強制されたためだとして、職員の妻が国と、当時の理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

 財務省は2018年6月に公表した内部調査で決裁文書14件の改ざんを認め、佐川氏ら20人を処分した。佐川氏らは背任や文書改ざんなどの疑いで告発されたが、大阪地検特捜部はいずれも不起訴とし、捜査を終えた。

 だが、誰が何のために改ざんに手を染めたのか、安倍晋三首相夫妻や首相官邸の関与はあったのか、大幅に値引きされた土地売却の手続きは正当だったのか。こうした疑惑の核心は明らかになっていない。

 まっとうな正義感を持った現場の公務員が自ら命を絶つまで追い詰められたのはなぜか。遺族ならずとも多くの国民が知りたい点だろう。

 佐川氏は国会の証人喚問で、捜査中であることを理由にほとんどの証言を拒んだ。裁判の当事者となった今、法廷で全てを語るべきだ。

 妻側は職員の手記や遺書を公表した。そこには、安倍晋三首相の国会答弁とつじつまを合わせるため、財務省が財務局幹部に決裁文書の改ざんを指示し、職員が抵抗のかいなく違法行為に加担させられていく過程が克明につづられている。

 首相や政府側は、新たな事実は含まれていないなどとして再調査には否定的だ。ただ、看過できないのは、手記と財務省の調査結果や国会答弁に食い違う部分があることだ。

 18年2月の国会で新たに開示した行政文書について、麻生太郎財務相や財務省側は「開示請求の中で、改めて近畿財務局で確認して存在が確認された」と説明した。

 一方の手記では、こうした資料が保管されていることを財務局の責任者は知っていたが、学園を特別扱いしたと疑われる資料は「存在していない」と説明するよう本省から指示があった、と指摘する。

 「全てを指示した」と記された佐川氏だけの問題ではない。都合の悪い文書を隠蔽(いんぺい)するため、省ぐるみで虚偽答弁を重ねていたとすれば麻生財務相の責任は免れない。財務省は改めて調査し、改ざんの真相を明らかにする必要がある。

 手記では、政権に忖度(そんたく)し公文書改ざんもいとわないとして幹部が複数名指しされている。加計学園問題や「桜を見る会」に通じる構図だ。都合のいい官僚を重用してきた安倍政権の下、モラル崩壊が起きているのではないか。そんな危機感を抱く。

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