社説

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 千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛(みあ)さんが2019年1月に虐待死した事件の裁判員裁判で、傷害致死罪などに問われた父親の勇一郎被告に千葉地裁はきのう、懲役16年の判決を言い渡した。

 「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨(せいさん)な虐待」「前例を超えて極めて悪質性が高い」と非難し、これまでの児童虐待事件より重い量刑とした。うなずける結果である。

 東京都目黒区で18年、5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが死亡した事件では、虐待した父親に懲役13年の判決が下された。

 いずれも、「しつけ」とはおよそかけ離れた暴力と、子どもを守るべき児童相談所などの関係機関の不手際が社会に大きな衝撃を与えた。

 その後も児童虐待は増え続けている。痛ましい事件を風化させず、防止のための教訓とすることを改めて社会全体で誓わねばならない。

 裁判で明らかになった勇一郎被告の暴力は、耳をふさぎたくなるものばかりだ。「ママ、助けて」と叫ぶ心愛さんを浴室に連れ込み、立たせ続けるなどの動画が法廷で流された。

 心愛さんの耐えがたい苦しみや恐怖、絶望を想像すると、胸が押しつぶれそうになる。

 被告は暴力行為の多くを否認しただけでなく、「娘が暴れたので押さえ付けた」などと暴行の責任を心愛さんに押しつけた。心からの反省は見えず、許しがたい自己弁護である。

 裁判長は、父親が児童相談所の職員に威圧的な態度を取ったことなどに触れ「社会的介入を困難にした全ての責任は被告にある」と述べた。

 しかし、心愛さんの情報は児相や学校、警察などでつくる協議会が共有していた。対応に問題があったことは明らかだ。

 専門家による野田市の検証委員会は「頼れる大人が1人でもいたら救えたはず」と関係者を批判している。全ての大人に向けた言葉として受け止める必要があるだろう。

 心愛さん、結愛ちゃんの事件はともに、母親は夫からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていた。虐待を含め、家庭内の暴力に一体的に対応する態勢づくりも急がれる。

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