社説

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 新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪・パラリンピックの開催を危ぶむ声が国内外で高まっている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、17日の臨時理事会で予定通りの開催を再確認した。政府も現時点では「準備を着実に進めたい」との姿勢を崩さない。

 だが感染者や死者は国境を越えて急増し、世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的大流行)」と表現する事態である。米国やイタリアなど多くの国が非常事態などを宣言し、移動も制限している。

 五輪開幕は4カ月後に迫る。このまま開催できるのか、あるいは延期か中止か。IOCは「現段階で抜本的な決定を下す必要はない」とするが、現実的な判断を下すべきときに来ているのではないか。

 安倍晋三首相は、先進7カ国(G7)首脳との緊急会議で「完全な形での開催を目指したい」と発言し、賛同を得たとする。無観客や不参加国があるような中途半端な形にはしないとの姿勢を強調しつつも、実は「延期はあり得る」との布石を打ったとの受け止めが広がる。

 国内の感染も終息が見通せず、開催は困難との見方が日増しに強まっているのが現状だ。

 トランプ米大統領は1年延期を提案し、大会組織委員会理事の1人は「2年後が現実的な選択肢」と組織委理事会で提起する考えを示している。共同通信が先日行った全国世論調査では、69・9%が「予定通り開催できない」と回答した。

 IOCが既定路線を変えない背景には協賛金を出す米メディアなどへの配慮や減収への懸念があるとされる。これに対し、ギリシャの陸上選手はツイッターで「私たちの健康を脅かしたいのか」と怒りをぶつけ、カナダのIOC委員も「開催は無神経で無責任な行為」と非難した。

 最優先すべきは選手や観客の安全である。IOCの姿勢に、選手らが不信感を募らせるのは無理もない。

 日本政府を含め関係機関は議論を封じるのでなく、さまざまなケースを想定した検討を急ぐべきだ。

 予定通り開催して、選手や観客に感染が拡大すれば影響は計り知れない。中止となれば、晴れ舞台を目指してトレーニングを重ねてきた選手たちにとってあまりに厳しい決断である。準備に要した総額1兆円を超える巨費も無駄になってしまう。

 延期の場合も、日程や会場の確保などに膨大な調整が必要となる。すでに内定した代表選考をやり直すかどうかは難しい問題だ。

 聖火リレーは26日に福島県を出発する。残された時間は少ない。IOCには「アスリートファースト」の視点で、的確な判断を求めたい。

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