社説

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 相模原市の知的障害者「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判で、元職員の植松聖被告に横浜地裁は死刑判決を言い渡した。

 「重度障害者は周囲を不幸にする」との身勝手な動機で、無抵抗の人たちに一方的にやいばを向けた犯行である。亡くなった入所者は19人に上り、事件は大きな衝撃をもたらした。

 遺族や関係者は今も苦しみや憤りを抱えている。求刑通りの極刑は、事件の重大性を考慮し、厳罰を求める被害者らの心情を踏まえた結果だろう。

 ただ、30歳の若い元職員がなぜ極端な差別意識を持つようになったのか。常軌を逸した犯行に及んだのはなぜか。

 1月の初公判以降わずか16回の法廷では、動機や背景の解明がほとんどなされなかった。深い「闇」は残されたままだ。

 被告は控訴しない意向を示している。このままでは教訓を共有することが困難になる。

 弁護側は高裁で審理を続ける道を模索すべきではないか。

 被告は起訴内容を認め、法廷では「亡くなられた方に申し訳なく思う」などと謝罪した。

 一方で「殺した方が社会の役に立つと思った」などと述べ、犯行については反省の色を見せなかった。殺害を「安楽死」と正当化する考えも変えず、遺族の感情を逆なでした。

 被告は2016年7月の犯行の5カ月前に衆院議長公邸を訪れ、襲撃を示唆する手紙を渡そうとした。職場でも過激な発言を繰り返して警察に通報され、市が精神保健福祉法による措置入院を命じた経緯がある。

 このため裁判では責任能力の有無が争点となり、被告の成育歴などを掘り下げる点では刑事司法の限界を示した。行政や専門家による調査と検証も考える必要があるだろう。

 この事件では警察が被害者全員を匿名で発表し、裁判でも大半の実名が伏せられた。遺族らの傍聴席周辺を遮断した法廷の姿が、障害者に対する社会の偏見を浮き彫りにしたといえる。

 ネット上では被告に同調する書き込みも見られる。この事件を「特異な人格による犯行」とだけ捉えてはならない。差別の「芽」を摘み取る努力につなげてこそ、事件の教訓は生きる。

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