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 東京電力福島第1原発事故後、避難区域となった福島県の8市町村から避難した216人が損害賠償を求めた訴訟で、仙台高裁は東電の責任を認定した。原告らが主張した「ふるさと喪失」を明確に認め、賠償額は一審の福島地裁いわき支部判決から1億2千万円増額された。

 被災者の心情に沿った画期的な内容といえる。郷里を奪われた人たちの怒りや悲しみに、司法が寄り添う姿勢がいっそう鮮明になった。

 原発事故を巡っては全国で約30の集団訴訟が起きている。一審段階ではすべて東電の賠償責任を認める判決が出ているが、控訴審判決は初めてで、結果が注目されていた。

 判決は、津波による事故の予見可能性があったとも断じた。東電は指摘を直視して、原告の早期救済に動き出さねばならない。

 一審の福島地裁いわき支部判決は、213人に対する計約6億1千万円の損害賠償を認めた。地域社会そのものが失われた「ふるさと喪失」についても一定の理解を示した。

 しかし東電が既に支払っていた慰謝料からの大きな上積みはなかった。また津波による事故の具体的な予見可能性も否定していた。

 今回の高裁判決は一審の判断を覆して「敷地の高さを超える津波が到来し、原子炉を安全に停止する機能を喪失する可能性があると認識していた」と断じた。対策工事が先送りされる中で原発事故が起きたことに対して「被害者の立場から見れば、誠に痛恨の極み」と述べた。

 東電はこの言葉を重く受け止めなければならない。

 原告の多くは、第1原発の30キロ圏内から福島県内外に避難した人たちである。9年前の震災と事故により無理やり郷里を奪われ、避難を強いられてきた。そのつらさは、賠償金で解消できるものではない。

 東電の旧経営陣3人が強制起訴された刑事裁判では、一審で無罪判決が出ている。一方、民事訴訟では東電の過失責任を認める流れができつつある。

 神戸地裁でも避難者による集団訴訟が審理されている。古殿宣敬弁護団長は「対策していれば事故は防げたと高裁が認めた。兵庫訴訟は主に避難区域外からの避難者だが、指摘された東電の悪質性は同じ」と、同様の判決が続くことを期待する。

 集団訴訟の原告は計1万人以上となり、訴訟に加われなかった避難者もいる。福島地裁の別の集団訴訟では昨年12月、初めて和解案が示されたが、東電側が拒否した。

 長期の裁判は住民にとって大きな負担となる。今後、各裁判所から原告に配慮した和解案が示されれば、東電は積極的に応じるべきだ。

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