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 東京電力福島第1原発の廃炉作業は、最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しが来年にも始まる。使用済み核燃料プールからの燃料搬出を2031年までに終え、デブリも取り出して41~51年に完了させる計画だ。

 20年以上もかかる工程に、支障を及ぼしかねない壁がいくつもある。その一つが今も増え続ける処理水の処分で、敷地内で保管しているが22年夏ごろには限界になるとされる。

 経済産業省や政府小委員会は海洋放出の利点を強調するが、風評被害の懸念はぬぐえない。地元の求める「安全・安心」に配慮した処分法を政府が模索するのが、復興の鍵となる廃炉を円滑に進める大前提だ。

 処理水は、原子炉内の核燃料の冷却水や流入した地下水などを多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水だ。すでに約120万トンに達し、さらに1日約170トンが発生する。

 除去しきれないトリチウムは人体への影響が少ないとされ、海外の原発では海や河川に排出している。政府小委員会の提言案は海洋放出を「現実的な選択肢」とした。

 しかし福島の処理水にはトリチウム以外の放射性物質の残留が発覚している点も考慮しなければならない。

 政府小委は、海洋放出による風評被害の影響も十分検討したとはいえない。福島の沿岸漁業は試験操業の対象魚種が増え、本格操業の検討も始まっている点を認識する必要がある。

 2月に来日した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、海洋放出案に「国際的な慣行に合致する」と理解を示した。一方で、決めるのは日本政府とも強調している。

 政府は小委の提言案やIAEAの見解に追随するのではなく、敷地外での保管や研究機関で進む新技術の開発など、他の手法の検討も尽くすべきだ。

 東京五輪が近づく中、政府は処理水問題の遅れがイメージダウンにつながると懸念する。しかし処分方法を強引に決めるなら、地元の理解は到底得られない。

 政府は住民の意向を十分にくみ柔軟な意志決定をしなければならない。

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