社説

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 阪神・淡路大震災は、都市部の直下型地震だった。6千人超に上る犠牲者の多くは建物などの下敷きになって亡くなった。9割が「圧迫死」とされる。

 一方、東日本大震災は海底のプレート境界で起きた地震によって津波が発生し、沿岸部のまちと住民を次々にのみ込んだ。約1万6千人の犠牲者のうち、9割が「溺死」である。

 岩手、宮城、福島3県などでは、2500人以上の行方不明者の捜索が今も続く。福島の原発事故とともに、巨大津波の猛威をまざまざと見せつけた。

 南海トラフ巨大地震が起きれば、津波は南あわじ市など兵庫県にも到達する。あなどらず、正しく恐れることが重要だ。

 東日本の災害を機に「津波てんでんこ」という言葉が注目された。「津波の時はほかの人を気にせず、てんでばらばらに逃げろ」という意味だ。岩手県の津波研究家、山下文男さんが1933年の「昭和三陸大津波」に遭った体験を基に広めた。

 岩手県の三陸地方は過去、何度も大津波に襲われている。自らの命を守る教えは広く根付いているとされてきた。

 だが9年前、大津波警報が発令され、避難が呼び掛けられる中で、海の様子を見に行く人たちの姿もあった。

 その一人、宮城県石巻市で勤務していた男性記者は「津波」と聞いて車で港に走った。近年は小さな津波しか到来せず、潮位を測る人の写真を撮るのが基本動作とされていたからだ。

 海側を見ると、流された家が折り重なって接近してくる。この記者は車を捨てて坂道に駆け上がり、難を逃れた。

 60年のチリ地震津波では三陸で142人が犠牲になったが、津波の高さは6メートルまでだった。その経験から「鉄筋の建物の2階なら大丈夫」と避難しなかった住民も少なくなかった。

 予想を超えた大津波に多数の人が流されたことが、内閣府の調査で明らかにされている。経験を踏まえた判断は大切だが、経験を過信することは禁物だ。

 近年の豪雨災害でも、避難勧告や指示が出ても逃げない人が多かったとされる。自然災害は往々にして人間の想定を超える。深く肝に銘じたい。

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