社説

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 核拡散防止条約(NPT)が発効し50年の節目を迎えた。約190カ国が参加する国際核秩序の支柱だ。

 だが理念として掲げた核軍縮は行き詰まりを見せている。核を手にする国は9カ国に膨らみ、地球上にはなお約1万4千発の核弾頭が存在する。NPTの枠組みが機能不全に陥っていると言わざるを得ない。

 広島、長崎で過酷な体験をした被爆者の平均年齢は82歳を超えた。三たび使われないよう、国際社会はその声に真摯(しんし)に耳を傾け、「核なき世界」を一刻も早く実現すべきだ。

 キューバ危機などを教訓にしたNPTは米英仏中ロの5カ国のみを核保有国と定め、核を新たに持つことを認めない。5カ国には核軍縮義務を課した。

 近年、保有国が義務を怠り、非保有国との対立が深まっている。核兵器禁止条約が採択されたのも、多くの非保有国が危機感を募らせているからだ。

 核を巡る世界の環境は厳しさを増している。現存する核の大半を二分する米ロ間では昨年、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。来年が期限の新戦略兵器削減条約(新START)の延長も不透明だ。このままでは不信が増長し、核使用のリスクを高める恐れがある。

 核軍縮の方向性を決める5年ごとのNPT再検討会議が4月下旬から国連本部で始まる。唯一の被爆国である日本には対立を解くパイプ役が期待される。

 日本政府は、「核の傘」に依存しているとの理由で、米国などの核戦力増強に明確な批判をしてこなかった。保有国に義務の履行を求めるとともに、非保有国の一つとして危機感を強く訴えるべきだ。

 そうした中、外務省が、日本原水爆被害者団体協議会が再検討会議に合わせて開く「原爆展」の後援に難色を示していることが分かった。福島第1原発事故などに触れた展示の変更を求めているという。

 被爆者が今も続く核の恐ろしさを発信するのに、原発事故を外すのは不自然だ。事実を覆い隠そうとする姿勢と受け取られても仕方がない。今年は広島、長崎の惨禍から75年の節目でもある。日本の姿勢が注視されていることを忘れてはならない。

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