社説

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 安倍晋三首相が、新型コロナウイルス対策を強化する法改正について野党5党に協力を求めた。立憲民主党などは早期審議を容認する方針で、来週には成立する見込みだ。

 改正するのは、2009年の新型インフルエンザ流行を機に整備された特別措置法で、対象に「新型コロナウイルス感染症」を追加する。政府は私権制限を伴う「緊急事態宣言」を出せる。

 既に、首相の要請で小中高校の大半は休校を実施し、北海道は緊急事態宣言を出して道民に外出自粛を呼びかけているが、いずれも法的な裏付けはなかった。さらなる感染拡大に備えた対策について法的根拠を整えておくことは必要だ。

 突然の一斉休校要請やクルーズ船内への足止めなど、これまでの政府対応は遅れやちぐはぐさが否めない。野党が1月に現行の特措法適用を提案した際は、今回の新型ウイルスには適用できず改正が必要としていた。1カ月以上も過ぎて野党に協力を要請したのは首をかしげる。

 ただ特措法の緊急事態宣言は、最悪の状況を想定したものだ。宣言に踏み切る前に、マスク不足や検査体制の不備、臨時休校に伴う保護者の負担増など目の前の課題解決に全力を挙げるべきである。

 緊急事態宣言を政府が出すと、都道府県知事は住民への外出自粛や人の集まる施設の使用制限などを要請できる。臨時に医療施設を用意するための土地建物の強制使用も可能となる。

 運用次第で市民の権利が過剰に制限される恐れがある。現行法に対しても日弁連が反対声明を出すなど慎重意見は根強く、13年の法施行後、一度も宣言は出されていない。

 宣言が必要な事態かどうかは、科学的根拠や専門家の意見を踏まえて慎重に判断し、発令の期間や規制の対象を明確にすべきだ。国民に丁寧に説明し、理解を求めなければならないのは言うまでもない。

 一連の政策決定に関わる会議の議事録は公文書として管理を徹底し、将来の教訓として検証可能な形で残しておくことも忘れてはならない。

 新型ウイルスによる肺炎の感染者は国内で千人を超えた。集団感染が起きたクルーズ船の乗船者が大半を占めるが、経路がはっきりしない患者も各地で増え続けている。さらなる拡大か、終息に向かうかの「瀬戸際」をどう乗り切るか。未知のウイルスとの戦いは正念場だ。

 感染対策を巡る首相の会見や国会答弁は場当たり的な上、専門家や野党の意見に真摯(しんし)に耳を傾ける姿勢に欠けた。

 その反省なしに国民の信頼は得られないと肝に銘じるべきだ。

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