社説

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 兵庫県が2020年度の当初予算案を発表した。阪神・淡路大震災から25年を経てなお厳しい財政状況を乗り切り、時代の要請に応えようと腐心した跡がうかがえる。

 一般会計の総額は1兆9956億円で19年度から602億円増となった。防災・減災対策の推進などを重点施策に据えたものの、主な増加要因は高齢化に伴う社会保障関係費と借金返済に充てる公債費だ。

 県税収入は19年度を271億円上回る過去最高の8566億円を計上した。しかし、消費税率の引き上げ分を除けば117億円減を見込む。内実は企業業績悪化による法人関係税の低迷に加え、長引く米中貿易摩擦や日韓関係の悪化、新型肺炎の影響などが影を落とす。

 井戸敏三知事は会見で「復旧・復興から新しいステージに移った」と述べた。中長期にわたって収支を均衡させる財政健全化策については丁寧に説明したが、県の将来像を明確に示したとは言いがたい。

 それでも、5期目の任期が1年半を切り、次代に種をまこうとする使命感は伝わってくる。その象徴が先駆的な取り組みと位置付ける「リーディングプロジェクト」の数々だ。

 ただ、16のテーマに計80もの事業を羅列したため、どんな花を咲かせたいのか、メッセージが伝わりにくくなった印象は否めない。毎年行う見直し論議の中で、目指す姿を練り上げる必要がある。

 兵庫県が直面する最大の課題は人口流出をいかに食い止めるかだ。

 総務省が1月に公表した2019年都道府県別人口移動報告で、兵庫は8年連続で転出が転入を上回る「転出超過」だった。外国人を除く転出超過数は7千人を超え、全国で4番目に多かったことが分かった。

 特に大都市への転出が多い若い女性をつなぎとめようと、県内での働きやすさ、暮らしやすさをアピールする施策が予算案にちりばめられているが、目新しさは乏しい。

 若者や女性の自由な発想を政策決定に取り入れ、兵庫の新たな魅力づくりに生かす仕組みが必要ではないか。地場産業の高付加価値化や、環境・エネルギー、AIなど次世代産業分野への若者や女性の参入も、より積極的に支援すべきだ。

 新しい兵庫の姿は行政だけで描けるものでもない。兵庫の強みである地域資源の多彩さを生かすには、県庁組織自体が多様性や柔軟性を備えているかを省みることも大切だ。市町との役割分担はもちろん、企業、NPOなどさまざまなセクターとの連携は欠かせない。

 予算案を審議する県議会には、地域の課題を直視し、魅力ある将来像を提起する議論を期待したい。

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