社説

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 東京電力福島第1原子力発電所の敷地内で保管する処理水の処分について、政府の小委員会が提言案で二つの選択肢を示した。海洋放出と、空気中に蒸発させる大気放出だ。

 海外の原発でも実績があり、放射性物質の監視が「確実に実施できる」として事実上、海洋放出を推奨している。昨年末に経済産業省が示した処分案も、海洋放出の優位性を強調しており、それを追認したかたちだ。

 一方で、風評被害を懸念する声も強く、特段の対策を採らなければ他の方法より「社会的影響が特に大きくなる」と指摘した。

 事故発生から9年を前にしても、福島の農家や漁業者は風評被害に苦しむ。福島県産食品の輸入を規制する国や地域は中国、韓国、米国など20を数える。提言案は海洋放出を「現実的な選択肢」とするが、多くの県民はそう受け止めないだろう。

 処理水の処分をどの方法でいつから行うかを、小委員会は政府の責任で決定すべきとした。処理水問題が福島の復興に密接に関わることは間違いない。政府や東京電力は早期の放出に固執せず、地元と十分な対話を重ね、理解を得られる手法を模索しなければならない。

 敷地内で保管するのは、原子炉内で溶け落ちた核燃料の冷却後、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水だ。その量は117万立方メートルにのぼる。今も増え続けタンクの増設を重ねているが、東電の試算ではあと2年で限界が来る。

 ALPSは放射性物質のトリチウムを除去できない。だが海水や大気で基準値以下に薄まるので、放出しても安全上は問題ないというのが経産省や小委員会の見解だ。

 提言案は、敷地外への保管場所拡大は地元の合意や法規制のクリアに「相当な時間を要する」とした。地下埋設や地層注入も、時間的な制約を課題とした。

 結論ありきの感が否めない。風評被害の側面から考えれば海洋放出は問題が多いと、小委員会のメンバーも明言している。

 どんな方法でも風評被害をゼロにするのは難しい以上、いかに最小限にとどめられるかを検討の主眼に置くべきではなかったか。

 あらゆるデータを公開し、プラスもマイナスも率直に公開するのが風評被害を抑制する第一歩だろう。

 トリチウム以外にもALPSで取り切れない放射性物質が処理水の一部に残っていることを、東電はきちんと公表しなかった。東電や政府には猛省を促したい。

 全ての処理水の放射性物質を再調査して可能な限り除去するのが、処分策検討の大前提だ。

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