社説

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 保釈中に密出国し、中東レバノンに逃亡した前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が記者会見を開いた。金融商品取引法違反など東京地検特捜部による起訴内容を全て否定し、無罪を主張した。

 会見は計2時間半に及んだが、具体的な証拠は乏しく、日本政府関係者と日産による「陰謀」という自説も説得力を欠いた。被告が選別した記者らに参加が限られ、日本の多くのメディアも除外された。厳しい追及を避けた印象は免れず、「自身のPRの場にすぎない」と非難されても仕方がない。

 不正な手段を使った出国は、日本の法治と主権をないがしろにするものであり、断じて許されない。

 日本とレバノンは犯罪人引渡条約を結んでいないため、このままではゴーン被告が日本に戻る可能性は極めて低い。日本政府は関係国とも連携し、粘り強く身柄の引き渡しを求めるべきだ。

 逃亡事件は出入国管理態勢の甘さを露呈した。被告は協力者の手を借りてプライベートジェット機で関西空港から出国したとみられる。どこに抜け穴があったのか、全容解明と再発防止策を急がねばならない。

 4月にも始まる予定だった裁判は見通しが立たなくなった。真相の解明は遠のき、被告自ら無実を証明する機会を断ってしまったといえる。

 一方で、電撃的な逮捕から異例の経過をたどった事件は、日本の刑事司法制度の抱える課題を改めて世界に示した。

 自白を引き出すために逮捕・勾留で長時間拘束する。弁護人の立ち会いも許されない。ゴーン被告が会見で強調したように、国際的に非人道的と批判される日本独特の「人質司法」は改善すべき点が多い。

 妻との接触禁止など厳しい保釈条件も世界的経営者だった被告を追い込んだとの指摘がある。だが、これらの条件は弁護団が提示し、裁判所を説得して、日本では異例の保釈を勝ち取った経緯がある。関係者の責任が問われるのは当然だが、被告の逃亡は、こうした改革への努力を台無しにした点でも罪深い。

 国内でも保釈後の被告による再犯や逃亡が相次ぎ、保釈の厳格化が議論されることになる。具体策として衛星利用測位システム(GPS)活用などが取り沙汰されている。他国で導入されているが、人権の観点から慎重に検討すべきだろう。

 特捜部と日産幹部との間で交わされた司法取引についても、ゴーン被告は自分を追放するために利用されたとし、違法性を訴えている。日本で始まったばかりの制度であり、客観的な検証が重要だ。司法改革の流れを後退させることは避けたい。

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