社説

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 安倍晋三首相が政権復帰して8年目に入りました。不都合な記録は隠す、捨てる、残さない。異論に耳を貸さず、議論を避け、責任を明確にしない。この手法で多くの疑惑や不祥事をやり過ごしてきた長期政権のゆがみが噴き出し始めています。

 昨年は「政治とカネ」問題で閣僚2人が辞任し、看板政策のカジノ誘致に絡む収賄容疑で元内閣府副大臣が逮捕されました。かんぽ不正では、行政処分の情報を漏らした総務事務次官が更迭されました。

 政治家の信頼は地に落ち、官僚組織は劣化し、民主主義の土台さえ崩れかねません。この危機を乗り越え、後世に胸を張れる政治を取り戻すために何ができるでしょうか。

        ◇

 まず、「国民の代表」である国会の実態を知ることでしょう。ヒントになるのが、国会審議の映像を路上で上映する「国会パブリックビューイング(PV)」の活動です。

 昨年のクリスマスイブ、東京・新宿で上映されたのは「桜を見る会」を巡る11月の参院予算委員会。共産党議員が「税金を使った行事の私物化だ」と安倍首相に迫り、疑惑追及の火ぶたを切ったあの論戦です。

国会論戦をシェアする

 国会答弁で横行する論点のすり替えを例えた「ご飯論法」が2018年の流行語大賞候補になった上西充子法政大教授が、SNSで呼びかけたのが活動のきっかけといいます。

 18年6月の働き方改革関連法案審議から始まったPVは、入管法改正、統計不正、官房長官会見の質問妨害などの審議を取り上げ、都内を中心に約40回を数えました。

 テレビやインターネットの公式中継と違い、スクリーンには審議の映像や音声とともに字幕や図解が表示されます。質問した議員を招いて解説してもらうなどして答弁のブレやごまかしが鮮明になってきます。

 PVの様子は動画投稿サイトでも視聴できます。上映用のDVDも制作し、北海道、関西、九州でも開催されました。

 国会だけで通用する用語やルールが議論を分かりにくくし、有権者を遠ざけている。そう考えると、市民の目線で論戦を組み立て直し、シェアする試みは注目に値します。見られているという意識は国会の論戦を活性化し、緊張感を取り戻すのに欠かせません。地方議会にも生かせるのではないでしょうか。

黙殺されないためには

 もう一つは、「おかしい」と声を上げる勇気です。気候変動の危機を訴え、1人で抗議行動を始めたスウェーデンのグレタ・トゥンベリさんはその象徴です。香港では民主化デモに大学生が立ち上がりました。

 日本にもいます。大学共通テストの民間英語試験や記述式の導入に異議を唱えた現役高校生たちです。

 踏み出すのは簡単ではなかったと思います。政治家に「サイレントマジョリティーは賛成」と都合よく解釈され、不安が黙殺されることへの危機感が行動に駆り立てたのでしょう。文部科学省も制度設計のずさんさを認め、先送りを決めました。

 安倍首相の自民党総裁任期は来年9月まで、同10月には衆院議員の任期満了を迎えます。いつ衆院解散があってもおかしくありません。

 野党の立て直しは急ぎの課題です。立憲民主党と国民民主党は合流協議に入りますが、単なる数合わせなら支持は広がらないでしょう。「安倍1強」に対抗できる旗を立てるには、両党の政策の違いを乗り越える議論を丁寧に進めるべきです。

 昨年の参院選で躍進したれいわ新選組の動きからも目が離せません。重い障害のある2人の当選で議場のバリアフリー化が一気に進み、当事者の声が国会を変えるさまを身をもって示しました。既存政党には思いつかないような方法で、有権者を引き戻すチャレンジに期待します。

 私たちも「どうせ変わらない」とあきらめてしまう前にできることはあるはず。例えば国会PVは自宅でも、カフェでも、パソコン一つあればできそうです。一歩踏み出して、誰かと政治を共有してみませんか。

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