社説

  • 印刷

 7月24日、いよいよ東京五輪の開会式が行われます。

 前回1964年の東京開催時に整備された新幹線や高速道路は、その後の高度成長をもたらすレガシー(遺産)となりました。その6年後に大阪で開かれた万国博覧会と合わせ、日本が国際社会に躍進する契機ともなりました。

 今回も5年後に大阪万博が開かれます。相次ぐ祝祭とともに日本が躍進した、あの時代をもう一度-。それが政府や経済界の狙いでしょう。

 しかしいま、祝祭の後に待ち構えるのは、インフラの維持管理や負担というやっかいな問題です。

     ◇

 2度目の東京五輪のシンボル、新国立競技場。「杜(もり)のスタジアム」を掲げ、約1500億円の事業費を投じて建設され、約6万人を収容します。初開催のスポーツ競技大会が、ヴィッセル神戸が優勝したサッカー天皇杯全日本選手権大会でした。

 五輪・パラリンピックが終わってから、この競技場を誰が運営するのかはまだ決まっていません。

 政府は運営権を民間に売却する意向です。しかし保安面を理由に詳細な図面を開示していない上、年間24億円とされる維持管理費を負担しても採算が合うかどうか、企業の中には厳しい見方もあります。

 当初は五輪後もさまざまな目的に使えるよう、開閉式の屋根や可動式の座席を設ける計画でした。しかし総工費が膨れあがって計画が白紙撤回され、いずれも見送られました。

 パラリンピックも含めたにぎわいは2カ月弱。維持管理費はその後も何十年と必要です。祝祭の後のソロバンこそ、重要だったのです。

大規模修繕を考えず

 目先の建設費や経済効果ばかりが意識され、長期的なコスト負担が議論されない構造は、今に始まったわけではありません。

 昨年9月、姫路市と朝来市を結ぶ播但連絡道路の老朽化問題が浮上しました。延べ198の橋やトンネルで耐震工事などが要り、約170億円かかるのに、運営主体の兵庫県道路公社にはそれだけの蓄えがありません。

 1973年の部分開通から利用者が払ってきた料金は建設時の借金返済のためであり、大規模修繕費は織り込んでいません。しかも道路公社に国や県が補助できるのは、災害復旧の場合だけなのです。

 修繕費を確保するため、外部の有識者による会議は2032年までの予定だった料金徴収期間を10年伸ばすよう提言しました。

 「有料道路が各地にできた高度成長期に、大規模修繕を想定していなかったことが問題。制度を見直す必要がある」と、会長の佐竹隆幸関西学院大大学院教授は指摘します。

後世の負担も見据え

 8年前の中央道笹子トンネル事故では老朽化した天井板の落下で9人が死亡し、これを機に全国の公共施設で検査が始まりました。

 建造物も老いる。大規模修繕は欠かせない。その事実に私たちが直面して、まだ10年もたたないのです。

 国土交通省の調べでは、建設50年を過ぎた道路橋は全体の約25%、トンネルは約20%を占めます。いずれの割合も今後、急増します。

 国も自治体も財政は厳しく、全てを修繕し維持させることは不可能です。公共施設の再編案を練る自治体も増えており、人口減で利用が見込めない施設は統廃合の決断が迫られます。

 その一方で、県内に近づいているのは建設ラッシュの足音です。

 阪神高速湾岸線の延伸工事は、神戸港に世界最大級の橋をかけます。神戸と太子町を結ぶ「播磨臨海地域道路」は20年度中にも大まかなルートが決まる見込みです。神戸市は三宮周辺の再整備、兵庫県は県庁建て替えの青写真を描きます。

 人口減が続くのはわかっていたのに、なぜ維持管理の負担がかさむことを考えなかったのか-。

 建設費や経済効果にとどめず、未来の県民、市民がこう嘆かなくて済むための手立てが必要です。

社説の最新
もっと見る

天気(2月26日)

  • 14℃
  • 10℃
  • 50%

  • 10℃
  • 6℃
  • 60%

  • 14℃
  • 9℃
  • 60%

  • 13℃
  • 8℃
  • 50%

お知らせ