社説

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 地球温暖化の影響とみられる酷暑や干ばつ、洪水など気象災害が世界各地で多発しています。国内でも一昨年は西日本、昨年は東日本が、大規模な水害と暴風の被害に見舞われました。

 温暖化要因の二酸化炭素を削減するために、各国と協調して自然エネルギーの普及を急がねばなりません。同時に「気候危機」といわれる自然災害への防災力を高める方策にも知恵を絞る必要があります。

 そのどちらにとっても重要な鍵となるのが森林です。まずは防災の目線で地域の森の存在について考えていきたいと思います。

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 日本では毎年のように大きな水害が起きています。原因として雨の降り方の変化がよく取り上げられますが、災害を抑制するには森林の荒廃にも目を向けることが必要です。

 深刻なのは保水力の低下です。手入れ不足で密集したスギの人工林では地表に光が届かないので草も育たず、雨は地下に染み込みません。耕作放棄された棚田もダム機能を失っている。結果、降った雨がそのまま河川へと流れ込み、水位が急激に上がる現象が増えています。

 昨年の台風19号では70以上の河川の堤防が決壊するなど多くの地域が洪水被害を受けました。日本は国土の3分の2が木々に覆われた世界有数の森林国です。その保水力向上は、下流域にある都市の水害リスクを減らす上でも欠かせません。

「脱石炭」の有力手段

 千葉県など関東地方を襲った台風15号では別の問題も表面化しました。暴風で鉄塔4基と電柱2千本が壊れ大規模停電となり、ほぼ復旧するのに12日もかかりました。その要因となったのが大量の倒木でした。

 気象庁は1898年の統計開始以来、2019年は最も暑かった年となる見通しを発表しました。近海の水温上昇で、勢力が強い大型台風の日本直撃が常態化することが懸念されています。

 温暖化への危機感が強まる中、世界では温室効果ガスの排出源である石炭火力発電の廃止が優先的な課題となっています。ところが、日本は先進7カ国で唯一新設にこだわり、世界の環境団体から批判を浴びています。先月の国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の際は、世界を危険にさらす国として「化石賞」に選ばれました。

 一方で、ドイツの環境シンクタンクは気象災害が一番激化したのは日本だと指摘しました。温暖化の悪影響を最も受けている国が、そのリスクをさらに高める政策を続けている状況は直ちに改めねばなりません。多くの犠牲者と甚大な被害を出す災害の現実と向き合い、エネルギー政策を根本的に見直すべきです。

 「脱石炭」の有力な手段となるのが、豊富な森林資源を生かすバイオマス発電と熱利用への転換です。

 国内各地で導入が進んでいますが、ヤシがらなど輸入燃料への依存という課題もあります。

 国は法改正で効率優先の大規模伐採を促していますが、逆に災害を招くはげ山を増やす恐れがあります。樹木の利用拡大は、適切な間伐による災害に強い森づくりという大前提を忘れてはなりません。

「気候非常事態宣言」

 温暖化に伴う気象災害で大きな被害を受けるのは森林や河川など自然と接する地域です。気候変動によって地域の個性である風景や特産物も失いかねない。そんな危機感から、世界で千以上の国や自治体が「気候非常事態」を宣言しています。

 日本でも長崎県壱岐市や長野県白馬村が、自然エネルギーの拡大などによって温暖化に対抗する決意を宣言しています。

 森に光が入るのを妨げている古い木や、山地災害を招く木を切って熱や電気に利用することで、二酸化炭素を吸収する若木を増やしていく。

 森林から防災力を高める循環をつくるために、治水とエネルギーの視点で流域のデザインを描き直す取り組みに踏み出せるか。地域の総合力が問われています。

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