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 安倍晋三首相が打ち出した「全世代型社会保障」を巡り、政府は医療、年金、労働についての中間報告を公表した。来年6月ごろに最終報告をまとめ、通常国会への法案提出などで実現を目指す。

 「国の形に関わる大改革」とする首相の意気込みと裏腹に、中間段階とはいえ小粒な内容が目立つ。社会保障を支える財源のあり方にも踏み込んでいない。

 強い経済を実現させ、その成長の果実で社会保障を強化してさらに経済を強くする「成長と分配の好循環」を掲げているが、それに頼るのはあまりに楽観的といえる。

 首相は消費税率10%引き上げに臨み、「今後10年はこれ以上の引き上げは必要ない」と述べた。しかし6年後の2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、社会保障費が一気に増大する。財源議論のないまま制度を見直しても、将来不安の解消に結びつくとはいいがたい。

 中間報告は医療に関して、年齢を基準にする今の体系を「現実に合わない」と指摘し、負担能力に応じた仕組みへの改革を掲げた。

 確かに、働く高齢者は増えている。社会保障を担う現役世代の数が減る以上、高齢者も能力に応じて担い手となることも必要だろう。

 ただその具体策は、一定の所得がある75歳以上の後期高齢者について、医療機関の窓口負担割合を現状の1割から2割に引き上げる内容などだ。線引きがあいまいで、有権者の反発を恐れた政治家が骨抜きにする懸念を抱く。

 年金政策では、希望すれば75歳から受け取れる制度改正を示した。受け取り開始を遅らせば年金受給額は増える。働く高齢者の年金額を在職中に毎年見直すことも掲げたが、これも支給増につながる。高齢者の労働意欲を引き出す施策が、結果的に年金支出を膨らませはしないか。

 一方、労働では兼業・副業の解禁やフリーランスの保護について、最終報告へ向けて検討していくとするにとどめた。

 働き方の選択肢を増やして社会保障の担い手を増やす狙いがうかがえる。しかし過酷な労働の温床となりやすいだけに、前のめりにならず慎重に議論を重ねるべきだ。

 今年の出生児は90万人を割り込み、統計開始の1899年以来最少と見込まれる。少子化は政府機関の推計を上回る速さで進んでいる。社会保障改革は全ての国民に関わる待ったなしの重要課題だ。

 財源も考えれば税制に踏み込む大事業になる。首相が長期安定政権を誇るのなら、その政治資源を注ぎ込むべきだ。改憲に力を入れても国民の将来不安はぬぐえない。

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