社説

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 日本郵政グループ3社で保険の不正販売が発覚した問題で、金融庁と総務省が行政処分を発表した。

 保険の新規販売の3カ月間停止を命じたほか、経営責任の明確化や企業統治の強化などを求める業務改善命令も出した。これを受けて3社のトップは総退陣し、政府は日本郵政の社長に増田寛也元総務相を起用する方針を固めている。

 高齢者に虚偽の説明をするなど、社員はノルマに追われ法令違反にまで手を染めた。しかし経営陣は現場の実情を掌握できず、不正の拡大を招いて郵便局に対する信頼を失墜させた。社長辞任は当然だ。

 しかしそれだけで、巨大企業の組織風土が刷新されるとは考えにくい。これまでメガバンクや大手メーカーの社長経験者が日本郵政の社長を務めながら、ノルマ体質を払拭(ふっしょく)できなかった。

 全国津々浦々にある郵便局が国民の信頼を取り戻し、必要なサービスを持続的に提供できる存在になるために、組織のあるべき姿から考え直すことが必要だ。

 金融庁は処分に際して、かんぽ生命と日本郵便を「顧客保護の意識を欠いた組織風土」と断じた。民営化の目的とおよそかけ離れている。

 日本郵政株は政府が57%を保有する。グループ4社の社長はいずれも民間出身だが、副社長は所管官庁の旧郵政省や旧大蔵省出身者が務めている。

 総務省の事務次官が、役所の先輩だった日本郵政の上級副社長に行政処分案の情報を漏えいしていたことも発覚した。守秘義務より役所内の先輩後輩の秩序を重視するのは、政や官の影響力が、今も色濃く残っている証しだ。

 政府は、株式を全て民間に売却する完全民営化をゴールに見据えている。しかし民業圧迫を避けるため、日本郵政グループの事業展開には制約がある。貯金や保険も全国の郵便局で扱うユニバーサルサービスが義務付けられている。

 経営の自由度が乏しいままでは、変化が激しい金融や物流の世界で生き残っていくのは容易ではない。結局は、従業員のノルマに依存する体質に回帰する可能性も否めない。

 小泉純一郎元首相が「行政改革の本丸」と位置づけ、世論の関心を引き付けた郵政民営化法の成立から、来年で15年になる。この間、法改正により日本郵政グループは5社から4社に集約された。

 しかし国民は、民営化のメリットをどれだけ享受できただろう。

 民営化の功罪や、当初目指した姿との乖離(かいり)が生じた要因などについては、政府が責任を持って検証する必要がある。

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