社説

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 米国とイランの対立で緊張が高まる中東地域に自衛艦1隻を派遣する。熟慮の結果とは思えない閣議決定を、安倍政権が27日に行う。

 自衛隊の活動には憲法9条の制約があり、武器の使用は正当防衛や緊急避難に限られる。通常は日本船舶の警護活動もできない。

 想定外の戦闘に巻き込まれた場合、ほとんど丸腰状態の自衛艦に何ができるというのか。

 「専守防衛」から逸脱する疑いも指摘される政府の方針を、与党の自民、公明党はすんなり了承した。議論を尽くしたとは考えにくい。

 河野太郎防衛相は海上自衛隊の部隊に直ちに準備命令を出す方針だが、決定までの拙速な動きは「とにかく派遣ありき」と映る。立ち止まって是非を再検討すべきである。

 活動海域はアラビア海北部やオマーン湾などだ。米国が支援するサウジアラビアなどがイランとにらみ合うペルシャ湾や、日本向け原油の8割が通過するホルムズ海峡は含まれていない。友好国であるイランの反発を避けたいからだろう。

 一方、トランプ米大統領は各国に有志連合結成を呼び掛け、ホルムズ海峡などで軍事活動を始めた。イランはこの動きを非難し、日本には一線を画すよう求めている。

 今回の派遣は、どちらにもいい顔をするための苦肉の策といえる。米国には事前に自衛艦派遣を伝えて了解を取り付け、先日来日したイランのロウハニ大統領には、安倍晋三首相が有志連合に参加しない考えを説明して「理解を得た」という。

 当初は20日に予定していた閣議決定を年末に遅らせたのも、ロウハニ氏を円満に迎えるためだった。

 政府は、今回の派遣を防衛省設置法に基づく「調査・研究」と位置づける。これだと防衛相の判断で実施でき、国会承認は必要ない。

 「国会軽視だ」との批判を意識したのだろう。閣議決定では活動期間を1年とし、活動終了時と期間更新時に国会報告を義務付ける。

 それでも国会への事前説明を抜きにした派遣に道を開くことに変わりはない。なし崩しの運用拡大に対する歯止めは十分とはいえない。

 万一、日本船への攻撃など不測の事態が起きた場合、政府は一定の武器使用が可能な「海上警備行動」を発令するという。ただし保護対象は日本籍の船に限定する方針だ。

 国際法に基づく対応で、外国船に乗った日本人は対象にならない。これでは何のための自衛艦派遣かと首をひねる人も多いだろう。

 海外派遣の既成事実化が最大の目的との疑念は強まるばかりだ。派遣に踏み切る前に、政府は国会で詳細に説明しなければならない。

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