社説

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 安倍政権肝いりのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る疑惑が、汚職事件に発展した。

 IR担当の内閣府副大臣を務めた自民党の秋元司衆院議員が、日本での事業参入を目指す中国企業側から現金300万円や約70万円相当の利益供与を受けたとして、東京地検特捜部に収賄容疑で逮捕された。

 現職国会議員の逮捕は、2010年に政治資金規正法違反容疑で逮捕された石川知裕衆院議員(当時)以来だ。贈賄容疑で中国企業側の役員ら3人も逮捕された。

 政権が成長戦略の目玉と位置付ける政策の裏で、権限を持つ政治家と特定業者が癒着し、不正な資金提供が行われていたとされる。事実とすれば極めて悪質で、政治への信頼を大きく失墜させる行為である。

 特捜部は、関係先として別の国会議員事務所も捜索した。他の政治家への広がりも含め、カジノに絡む利権構造の全容解明に全力を挙げてもらいたい。

 カジノを収益の柱とするIR事業は、安倍晋三首相が「観光先進国への原動力」などと期待する一方、ギャンブル依存症や地域の生活環境悪化などへの懸念が今も根強い。

 秋元容疑者は、16年にIR整備推進法案の審議を衆院内閣委員長として仕切った。その後、内閣府副大臣に就き制度設計などを担ったほか、観光政策を所管する国土交通省の副大臣も兼務した。IRへの慎重論もある中、官邸の意に沿った推進役の急先鋒(せんぽう)だったと言える。

 贈賄企業との密接な関係は、副大臣就任とほぼ同時に始まったとみられる。那覇市で企業が開いたIRに関するシンポジウムに登壇し、広東省深●(しんせん)にある本社で経営トップと面会した。18年2月、この企業が参入を目指す北海道への旅行に招待された件が逮捕容疑の一つになった。

 秋元容疑者は取材に、不正への関与を否定している。だが、便宜を図ってもらおうと近づく企業の狙いは見え見えだ。接触を受け入れた時点で政治倫理の欠如が疑われる。

 さらに、現金300万円を受け取ったとされる17年9月下旬は、衆院解散・総選挙を目前にした時期である。比例復活が続いていた秋元容疑者はこの選挙で初めて小選挙区の議席を得た。不正な資金で選挙を戦ったとすれば有権者への裏切りだ。議員辞職は避けられない。

 IR事業は整備地域の選定に向け大詰めを迎えている。菅義偉官房長官は事件の影響を否定し「着実に進めたい」と述べた。だが、何事もなかったかのようにやり過ごしてはならない。政府は看板政策に降りかかった疑惑について、事実関係などを国民に説明する責任がある。

(注)●は「土」の右に「川」

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