社説

  • 印刷

 三菱電機の20代の男性新入社員が上司からパワーハラスメントを受けたというメモを残して今年8月、三田市内の公園で自殺した。三田署は教育担当だった30代の男性上司を自殺教唆容疑で書類送検した。

 職場でのハラスメントを巡って同容疑が適用されるのは異例である。社員の遺族はパワハラで精神的に追い込まれたとして労災申請し、三菱電機に損害賠償を求める考えだ。

 三菱電機では技術職や研究職の男性社員5人が長時間労働やパワハラが原因で精神障害などを発症し、2014~17年に労災認定された。うち2人は命を絶った。子会社の男性社員も17年に豊岡市の工場勤務時に過労自殺し、労災が認められた。

 異常事態といわざるを得ない。子会社を含むグループの組織風土やガバナンスに大きな問題があるのではないか。経営の最優先課題として再発防止に取り組むべきだ。

 今夏に亡くなった社員は4月に技術職として入社した。7月にシステム開発などを担う尼崎市の「生産技術センター」に配属され、上司から一対一で指導を受けていた。

 社会人になってわずか4カ月での痛ましい死に言葉を失う。残したメモの内容は生々しい。

 「殺すからな」「死んどいた方がいいんちゃう?」「お前が飛び降りるのにちょうどいい窓あるで」。こうした暴言を受けた、と記す。事実であれば強い憤りを禁じ得ない。

 一方、捜査関係者らによると、上司は社内調査に「死ねとは言っていないが、似たような言葉を使ったかもしれない」と説明したという。

 企業にハラスメント防止対策を義務付ける規制法が来年6月に施行される。厚生労働省はパワハラの定義や具体例を指針にまとめたが、多くの課題が指摘されている。

 最たるものが、上司らによる「指導」とパワハラの線引きがあいまいな点である。

 指針は「新規採用者を短期間集中的に別室で教育」「社会的ルールを欠いた言動を再三注意して、改善されない場合に強く注意」はパワハラに該当しないとしている。

 企業側は「必要な指導もできなくなる」と懸念するが、労働者側は「企業に逃げ道を許す」と批判する。今回の三菱電機の新入社員のケースでは、上司が指導中に「自殺しろ」などと言ったとされる。

 企業が拡大解釈しないよう、監視する必要がある。指針についても不断の見直しを求めたい。

 過重労働とパワハラはセットの場合が少なくない。規制法には罰則規定が設けられなかった。働く者を守るという原点に立ち、罰則導入へ向けた議論を始めねばならない。

社説の最新
もっと見る

天気(2月26日)

  • 14℃
  • 10℃
  • 50%

  • 10℃
  • 6℃
  • 60%

  • 14℃
  • 9℃
  • 60%

  • 13℃
  • 8℃
  • 50%

お知らせ